角膜潰瘍について
~角膜潰瘍~
角膜潰瘍は、角膜に傷がつき、その傷が悪化してさらに深くなった状態です。
角膜は目の表面にある透明な膜です。この角膜に外傷や感染、神経の異常、形状の問題、免疫の異常などにより角膜に傷がつき、さらにその傷が進行して深くなった状態が角膜潰瘍です。
進行して悪化した場合、角膜に穴が開くこともあります(角膜穿孔)。
~原因は?~
角膜潰瘍の多くが涙の減少により起こります。涙が減少する原因は様々です。
・外傷
・感染
・神経異常
・免疫異常
・遺伝
・代謝異常
・形状の問題 など
また、どの動物にも起こります。特に犬で多く、シーズーやフレンチブルドック、パグ、チワワなど目が大きい種類や短頭種とよばれる鼻が短い犬種に多くみられます。
フレンチブルドック
(角膜穿孔)
雑種猫
(角膜穿孔)
~症状は?~
強い痛みがある場合が多いです。そのため、しょぼしょぼしたり、充血したり、涙が多かったり、目が開けられなかったりすることが多いです。
・しょぼしょぼしている
・めやにが多い
・涙が多い
・目が赤い(充血)
・角膜が濁っている など
・めやにが多い
・涙が多い
・目が赤い(充血)
・角膜が濁っている など
~検査と診断~
顕微鏡や染色を用いて、角膜を観察して傷の有無を確認しています。また傷がある場合、傷の場所や深さを確認します。
状況により涙の量や感染の有無を調べます。場合により、全身の異常(ホルモンの病気や免疫の病気など)がないかを調べるため、血液検査や超音波検査など全身の検査を行います。
~じゃあ治療はどうしたらいいの?~
基本的には点眼薬で治療します。涙を補ったり分泌を促したりする点眼薬や感染を抑えるための抗菌薬の点眼薬、角膜の治癒や血管新生を促す血清点眼(血液から作成する点眼薬)などを使用します。
しかし、角膜潰瘍が深い場合や進行が早い場合、角膜に穴が開いた(角膜穿孔)場合は、手術が必要になることもあります。
~人工膜を用いた角膜整復術〜
手術用の人工の膜を用いて角膜潰瘍を修復する手術です。人工膜を角膜潰瘍部に貼り付けることにより、角膜が修復するのを補助します。
手術前
(角膜潰瘍:デスメ膜瘤)
手術直後
術後3週間
~結膜フラップ〜
結膜(白目の部分にある表面の膜)を用いて潰瘍部分を修復する手術です。片方のみ結膜と繋げて行う場合や両方向を繋げてやる場合、切り離してやる場合など、潰瘍部の大きさや状態によって様々なやり方があります。
① まず角膜潰瘍部分の傷んだ角膜や汚れをきれいに除去します。
② フラップを作成する結膜を露出します。
③ 潰瘍部の大きさに合わせて結膜を切り出します。
④ 切り離した結膜を潰瘍部に合わせます。
⑤ 最後に角膜と結膜を縫合します。
角膜の傷が角膜上皮(角膜の表面)のみの場合は、数日から1週間程度で綺麗な透明の角膜に戻ります。しかし、角膜の傷が深い場合や感染があった場合などでは、治癒するまでに数か月を要したり、治癒した場合でもきれいな角膜に戻らないことが多いです。角膜に白く跡が残ることが多いですが、重度の場合以外は目が見えなくなることはほとんどありません。