水晶体脱臼・亜脱臼
~水晶体脱臼~
水晶体脱臼とは水晶体が本来の位置からずれてしまう病気です。

水晶体が外れて前に…
~水晶体とは?~

水晶体は、眼球内でレンズのような役割を果たし、ピントを調節する透明な組織です。水晶体は毛様小帯(チン小帯)という細い繊維によって眼球内に固定されています。
~水晶体脱臼とは~
水晶体脱臼とは、この毛様小帯が断裂したり緩んだりすることで、水晶体が本来の位置からずれてしまう病気です。

前方脱臼
前眼房内(角膜と虹彩の間)にある場合

後方脱臼
硝子体内(水晶体より後ろ)にある場合
~原因は?~
水晶体脱臼は、原因によって以下の2つに分類されます。
<原発性水晶体脱臼>
・テリア種、ミニチュア・シュナウザー、プードルなどに多く見られます。
・猫やウサギ、他の動物でも発症します。

ジャックラッセルテリアやヨークシャテリアも発生が多いよ。
<続発性水晶体脱臼>

ミニチュアダックスフンドの亜脱臼
耳側(外側)に水晶体がずれています。

うさぎの前方脱臼
白内障に続発した脱臼です

ハムスターの前方脱臼

デグーの亜脱臼
水晶体が後ろ側に亜脱臼しています。
~症状は?~

水晶体脱臼の症状は、脱臼の程度や場所によって異なります。特に前方脱臼の場合は緊急疾患です。
前方脱臼の場合
・激しい目の痛み
・目をしょぼしょぼさせる
・まぶたの痙攣
・角膜の腫れ(角膜浮腫)
・高眼圧
・失明
後方脱臼の場合
・無症状(症状が軽いことも多い)
・目が赤くみえる(眼内出血)
・網膜剥離
※ 後方脱臼で緊急を要さない場合でも、前方に移動する可能性があります。

シーズーの前方脱臼
長期間無治療で水晶体がぶつかっていたダメージにより、角膜が破れて水晶体が外に飛び出してしまった状態。

うさぎの前方脱臼
角膜への強いダメージにより、重度の角膜潰瘍から穿孔に至った状態。
~診断は?~
視診や細隙灯検査で診断可能です。眼内の状態が視認できない症例では、超音波検査(エコー)を用いて診断することもあります。

前方脱臼のエコー像

後方脱臼のエコー像
~治療法は?~
水晶体脱臼の治療は基本的に外科手術!
治療法は脱臼の種類や程度、原因によって異なります。
・内科的治療
・外科的治療
特に前方脱臼の場合、激しい痛みや続発性緑内障を伴うことも多く、早急な外科手術が推奨されます。手術方法は水晶体の摘出を行います。

水晶体脱臼の手術は、主に次の目的で行われます。
・眼内の炎症や眼圧の上昇を抑え、緑内障などの合併症のリスクを軽減する。
・痛みを緩和し、犬の生活の質(QOL)を向上させる。
~水晶体摘出術~

脱臼した水晶体を眼球から取り除く手術です。前方脱臼の場合や、内科的治療で効果が見られない場合に選択されます。水晶体を取り除くだけが多いですが、人工レンズを装着することもあります。
術後は、感染症予防や炎症を抑えるための点眼薬や内服薬を使用します。エリザベスカラーを装着し、目をいじらせないようにする必要があります。

角膜を切開し、水晶体を保持します。

そっと外に水晶体を取り出します。

眼球内をきれいにして角膜を縫合します。
~手術のリスクと合併症~
水晶体脱臼の手術にも、リスクや合併症が伴います。
• 眼内出血
• 緑内障
• 網膜剥離
• 角膜浮腫
• 失明 など
~予防できる??~

遺伝性の水晶体脱臼は予防が難しいです。そのため、定期的な眼科検査で早期発見・早期治療が重要です。特に片方の目が水晶体脱臼になってしまった子は、反対の眼も脱臼する可能性があります。続発性の水晶体脱臼は元となる病気の治療をしっかりと行うことが大切です。
動物病院で定期的に眼科検査を行うことが大切です!